暮らしに潤いを与え心地よく使える陶器を作りたい。
小代焼の開窯は、文禄の役(1592)後、加藤清正公に伴われて来た朝鮮半島の陶工達によって小代山麓、現在の熊本県南関町宮尾の地で創られたのがその始まりと言われています。
小代焼には大きく分けて青小代・黄小代・白小代に区別されています。当工房はその逞しい形と味わい深い地釉に、あたかも古武士のような風格と力を備えた白釉の打ち掛けなど、昔ながらの特徴と技法を生かしながらも、独自の焼成法を取り入れつつ現代の生活に合ったうつわ作りを心掛けております。陶器は、使い込む程風合いが出てまいります。毎日使っていただける様な器を創っていけたら良いなと思っています。伝統とは灰を守る事ではなく、燠(おき)を密かに保ちつづける事である。福田るい( 小代瑞穂窯資料より抜粋)
江戸時代に作られていた小代焼の礎、古小代の再現に挑む父の背中を見て育った福田るいさん。
父亡き後に「小代瑞穂(みずほ)窯」を受け継ぎ、昔ながらの特徴と技法を生かしつつも独自の焼成法を取り入れ、現代の生活に合った器を作り続けています。
大学時代には油絵を学びましたが、平面よりも立体的な造形に興味を持つようになりました。益子焼で有名な栃木県の島岡製陶所で修行したのち、瑞穂窯で作陶し現在に至ります。
小代焼は、釉薬の調合や焼成温度の違いによって青・白・黄に大別されますが、実際目にすると千差万別。さらに福田さんの場合、ワラ灰で生み出した独自の「藍釉」も大きな特徴です。従来の青小代は乳白色を帯びていますが、福田さんが創り出す藍は、さらなる深みがあります。そしてもう一つの特徴といえるのが、“しのぎ”の技法。小代焼といえば“打ち掛け”のように釉薬のかかり具合を生かした技法が多いですが、“しのぎ”の技法だと掻き道具を使って器の表面を削り、削られた部分に沿って流れ落ちる釉薬によって文様が浮び上がります。器にリズムが生まれ、和洋問わず食卓を彩ってくれます。
「文様を生かすため、たとえば茶碗だと深みをもたせて高台の部分を区切らないなど工夫しています。持ちやすいので、評判も良いんです。」
収納スペースが限られている今のライフスタイルだからこそ、福田さんの器は用途を限定するような縛りがありません。
「1個の器をいろんな用途に使い回してもいいと思うんです。使いやすい形を提供しますが、それを完成させるのは使って下さる方。毎日使い込むことで風合いが出てきますから、ご自分の色にしていただきたいですね。」
シンプルでいて温かみのある土味を生かした器は、使うほどに魅力を増していきそうです。